Grace sorprendente  三章 1 




一通り笑って満足したらしい。ようやくティムは笑いを収めた。
そして、笑われたことで少し不機嫌そうなレフに機嫌を取る為か、喉が渇いているだろうと酒を頼んでいる。
長い付き合いのようで、レフがこうすれば機嫌が直ると確信しているようだった。
「頭目にしちゃ随分と時間が掛かりましたねぇ」
「うるさい。あれだけの人数を相手に逃げられた事でも上出来なんだよ」
「まぁ、そうですよねぇ。俺だったらきっと見つかっちまってますよぉ」
「嘘付け。お前ならもっと早く逃げられるだろ」
「いやぁ、自分でも思ってたんですけどやっぱりですかぁ。実は頭目より俺の方が優秀なんですねぇ」
「……てめぇ、本心ではそう思ってたのか」
だが先程よりも機嫌を悪くするレフに、その原因であるティムはどうしてさっきよりも機嫌が悪くなったのか気付かずに首をかしげる。
だが、これ以上何か話してもレフの機嫌が悪くなると本能で悟ったのか、千歳の方に話を振った。
「それにしても、気の毒でしたねぇ」
「…………」
ティムの言葉はあまり気の毒そうに思えないのんびりとしたものだ。
千歳は、どう応えていいのか分からず何も言わずに苦笑するだけにしておいた。
まだ、あの無惨な姿が脳裏に焼きついている。
暫らくはあれが頭を離れないだろう。もしかしたら夢に出てくるかもしれない。
そして涙するのだ。苦しむ友達を助けられないという絶望と自身の失望で。
軽く頭を振ってその映像を意識しないように努める。そればかりに囚われてしまいそうになったからだ。
「それで、この後はどうするんですかぁ?」
と、村での惨劇の事で少しぼうっとしていた千歳だったが、ティムの言葉に現実に戻された。
「この後……」
「そうですよぉ。村まで行って無事戻ってきたんですけどぉ、別にそれで終わりって事は無いですよねぇ」
確かにティムの言うとおりだ。
あの時は村の人が生きていて欲しいと思いながら行動したのだ。
もし生きていた人がいたなら色々と考える事が出来ただろう。
だが今はその希望が儚く消え去り、非情な現実を見せられる結果となってしまった。
だからなのか、自身の希望が叶ったことしか考えていなかった千歳は呆然となった。
「何も、考えて無かったです」
言葉尻が小さくなって落ち込む。
しかしそれを分かっていたのか、レフが頼んだ酒を店の女が運んでくるのを待ちつつ溜息をつく。
「そりゃ仕方がねえさ。誰だって親しいやつが死んだなんて思っていないんだからな」
ティムが肩を竦めた。
「そりゃそうですねぇ」
「…………」
その時、ちょうど頼んだ酒が運ばれてくる。
それをレフは受け取って直ぐに一口喉に流し込むと、千歳に目を向けた。
「嬢ちゃん、何も考えてなったのは仕方が無いとして、ここからは直ぐに出ていった方がいいぞ?」
「え?」
疑問を投げかけるようにレフを見る千歳。
だがティムは分かっているようで、うんうんと頷いている。
「きっと怪しい奴が居たという報告がもうされていると思いますねぇ」
「ああ、ベルツェ村に近いここにもその報告は既にされているだろう」
同意するティム。
千歳もそれは考えていた。怪しい人物がいたという事は既に知られているのだからそういう事はあるだろうと。
だが、そう思っている一方でここを直ぐに離れていかなければならないと急かされる事に首をかしげる。
「でも、顔は見られてないですよね?それに、これだけ人が多い中で見つかるなんて事は……」
「見られてるぞ。はっきり見られたかは分からないがな」
レフは喉を突いて倒した騎士のことを話した。
千歳はあまりにも他の事に頭がいっぱいだったのか、そのことをすっかり忘れていたようで思いだしたのか、あっと言う様な顔になる。
ティムがそんなことがあったのかと言うように片手で顔を覆った。
「暗い中だったからと安心は出来ない。だからこそ、直ぐにここから離れていった方がいいんだ」
「万が一顔をはっきりと見られてたら厄介ですからねぇ。あ、でも頭目の方が印象深いですからお嬢さんの事はあまり思い出せないかもしれないですよぉ」
冗談交じりにいうティムだが、それを笑って応えることは千歳にはできなかった。
本当に顔をあの騎士にはっきりと見られていたらという見えない不安がじわじわと駆け巡るような、そんな感覚が身体を支配している。
レフがそんな不安を感じ取ったのか、ニッと笑って安心させるように千歳の頭をポンと軽く叩いた。
「大丈夫だ嬢ちゃん。今はまだ表立って探そうとしていないようだからな。直ぐに離れれば何とかなる」
「……はい」
それに不安が少し無くなって小さく笑いながら応えた。
レフはよしよしと言う様にポンポンと数回頭を叩くと、それから酒をグイッと飲み干す。
すると、その酒を飲み干したのがスイッチとなったのか、急にレフの雰囲気がガラリと変わったような気がした。
「まぁ、一番問題となっていた事を話終えた訳だが……もう一つ気になる事がある」
「もう、一つ?」
千歳とティム二人揃って首をかしげる。
それがなんなのか全く分からない二人に対して、レフは千歳にある質問をした。
「嬢ちゃん、ベルツェ村に行く前にここで兵を募集するとか言っていた奴が居ただろう?」
「はい」
この町の警備をしている兵の隊長が高々と声を上げて演説のように言っていたのを思い出す。
ティムはその時酒に酔って寝ていたので知らないのだろう。頭にクエスチョンマークが浮かんでいる。
だが、説明するのが面倒なのかティムに何も言わずレフは続ける。
「その時に、村に起こったことを言っていたがなんて言っていた?」
「え?村に起こった事ですか?」
「ああ」
肯定するレフに千歳は話を思い出そうと暫し考え込む。
「確か、すごい酷いことをしていたって言ってました」
「具体的には、家畜を奪われて畑を荒らされ、村に火を放たれたと言っていた」
それがどうしたのだろうかと無言で問いかけると、レフは少し間を置いて話してきた。
「村を実際に見たときどうだ?家が一つ焼け落ちてたがそれだけ。他はどこも荒らされたようには思えないほどだったろう?」
千歳はハッとなってレフを見る。
「もちろん、それだけといえばそれだけだ。ただ大げさに言って戦意を高めようとしただけなのかもしれない。だが、どうにも違和感を拭えない」
レフは顎に手を当てて考え込む。
違和感。それがどうもレフを悩ませているようだ。
千歳には村が言われていた事と実際に見たものが違っていたという事しか分からない。
そもそも違和感など感じている暇など無かったのだ。
「その違和感は…なんなんですか?」
「分からん。考えても考えても、どうもこれといった答えが出ないんだ。年を取ると頭の中身が固くなっちまっていかんな」
レフは首を振って千歳に応えたが、直ぐにまた思考に没頭する。
「頭目なら外も中もどっちも固いですってぇ」
ティムはそうやってからかったが、言われた当人はその言葉を聞き流したのか、それとも考えに集中しているのか何も言わない。
無視されて少し拗ねるティムを余所に千歳も同じくどこかおかしかったのか考え始めた。
村に行く途中では騎士が道を塞いでいた。そのせいで村へ行く事が出来ず、結果隠れていくしか道は無いという事で千歳達は身を潜めながら進む事になった。
木々の間を進んだお陰で村に行く時は全く見つかる事は無く、あまり時間を掛けずに村に辿り着いた。
それから余り荒らされていない村に入る事が出来て、あの見るにも耐えない親しい人たちの姿を目撃する。
その後は埋葬する暇も無くレフと一緒に村を出ることになって、途中で騎士に見つかり必死に逃げた。
そして、無事にこうして戻ってきた。
「……別に……違和感を感じるところ……私は無いと思うんですけど……」
控えめにそう意見する千歳。
やはり考えても何処がおかしいと明確に思える所は無かったのだ。
だが、レフはそれでも自分の感覚を信じているのか、頭の中であれこれと考えている。
ティムはそんなレフを見て肩を竦める。
何を言っても無駄だというような仕草に千歳も苦笑し、それからは考えを邪魔しないように何も言わないようにした。
「あー……ダメだ。わからん!」
それから数十分考え込んでいたレフがとうとう根をあげたというように手を上げた。
そして、その鬱憤を晴らすかのように追加されたテーブルに置いてある酒を豪快に飲み干す。
あまりの豪快っぷりに酒が気管に入ったのか、うっ! となって咳き込む。
「もう良いじゃないですか頭目ぅ。厄介事が増えたら面倒ですよぉ」
咳き込んで苦しんでいるレフに対して、ティムは欠伸を殺しながらもう良いだろうという意味を込めてレフに目配せする。
いい加減早く部屋に戻って温かいベッドに寝転んで惰眠を貪りたいのだ。
だが、そんなティムの願いも空しくレフはうるさいとでもいうように酒を食らう。
ティムはやれやれと溜息を吐く。このまま付き合っていたらまた前のようにこっちが潰れてしまう。
それが分かっているからこそティムは引かずに更に言った。
「あんなにたくさんの騎士様に追いかけられて長い時間逃げ回っていたんですから疲れて頭が回らないんですよぉ。だからまずはゆっくり休んでそれから考えれば良いじゃないですかぁ」
兎に角もう自分が早く休みたいが為に出た言葉だった。
千歳もティムの真意は分かっていないが、その言葉には同意した。
ここまでレフは確かに騎士たちに追いかけられていたのだ。服も身体もボロボロになりながらも、しかしちゃんと無事に帰ってきた。
それでも身体の疲れはかなりあるだろうし、精神的にもやはり緊張の連続だったのだから疲れていると千歳は思っている。
まぁ、ここで酒を飲んでいることから本当に疲れているのかという疑問を持ってしまいそうだが。
だから千歳もティムと一緒に、もう部屋で休んだ方が良いですよと言おうとした時だった。
「…………ティム、さっきなんて言った?」
「え?」
レフが途端に真剣な表情でティムを見ていた。
いきなり真剣に見られてティムは困惑する。
何か怒らせちゃったかなぁと頭の中では何とも暢気に考えていたのだが、レフがジッと見て早く言えと促してくるので、何を言ったか思い出しながら口を開いた。
「えっとぉ……たくさんの騎士様に追いかけられて疲れてるから休みましょうみたいなことを言いましたねぇ」
「それだ」
「?」
やっと分からなかった問題が解けたというようにレフは叫ぶ。
対して千歳とティムは訳が分からず首を捻るばかりだ。
「あの、どうしたんですか?」
「何が、それだってんですかぁ?」
二人同時に疑問をぶつけるが、ぶつけられたレフはそうだそうだやっと分かったぞと自分で納得しているだけで答えてくれない。
もう一度というように、ティムが多少声を大きくして言い直した。
「何がぁ、それだってんですかぁ!」
それが聞こえたのか、いや、聞こえすぎて耳を押さえるレフ。
身近にいた千歳まで耳を押さえてしまう。
ルメリオ亭にいる周りの客も何事かと千歳達の方を怪訝そうに見るが、特に騒ぐような事ではないと分かると直ぐに自分たちの話に戻ってどんちゃん騒ぎを再開し始める。
そして再開し始めたと同時に、ティムの大声に対するレフの返事は拳による鉄拳制裁だった。
「うるせぇぞティム。そんな大声出さなくても聞こえる!」
ゴツゴツとしたレフの拳は殴ったら痛そうだと千歳は思っていたのだが予想通り痛かったらしい。
暫らく痛さに悶えていた彼は涙目のままレフを見上げて、
  「聞こえてなかったじゃないですかぁ」
理不尽だとぶたれた頭を抑えて嘆いた。
千歳は苦笑して、痛いところを擦っている彼に代わってレフに訪ねた。
「えっと、何か分かったんですか?」
「ああ、違和感の正体が分かったんだよ嬢ちゃん」
先程ティムに怒鳴っていた事など忘れたように笑みを浮かべて頷くレフ。
「違和感が?」
レフの言う違和感の正体が気になる千歳は話の続きを促す。
色々と考えてどこかおかしいところを探したのだが、結局自分では見つけることが出来なかったのだ。
それは一介の女子高生だから考えがつかないのか、はたまたレフが優れているのか。
兎に角、千歳は何処がおかしいのかを知りたくてレフを見る。
そんなレフは喉を潤すために酒を一口飲んで間を置き、それから違和感の正体を話し始めた。
「俺たちは、成り行きだがマーシル帝国に襲われたというベルツェ村に一人で行くのは危ないという事で同行した。それから騎士に見つからないように潜入して村に入り、村のモンが生きてるか確認してから村を引き返した。生きている奴はいなかったし、途中で見つかって追いかけられたりしたが無事に帰ってこれただけでも儲けモンだ。後味の悪い結果になっちまったのが残念だがな」
「…………」
「だがな、そもそもその村に入る前からおかしかったんだよ」
「え?」
これには一瞬訳が分からずにぽかんとなった。
それはどういうことなのか?
「嬢ちゃん、良く考えてみな。キリジア帝国はマーシル帝国に攻められた事で国と国の戦争に発展したんだ。襲われたベルツェ村は取り戻す事が出来たらしいが、油断は出来ないはずだ。ベルツェ村はキリジア帝国とマーシル帝国の国境近くにあって、今じゃ最前線のようなものだからな」
「…………あ」
そこで千歳は、はっと気付く。そうだ。国と国との争いなのだ。
ベルツェ村は荒らされたということが殆ど無いほどそのままだった。そのせいか、家畜や食料などは手を付けられていなかった。
ならば、それらを最前線に駐屯するたくさんの騎士たち利用しようとするはずだ。もう村には誰一人としていないのだから遠慮などない。それらはきっと騎士たちの戦争の為に有効に使われるはずだ。
それでも、村の備蓄では国同士の戦争で駆り出される騎士たちには到底出回らない。足しになるくらいだ。
そう、レフが違和感を感じていた部分、それは……。
「騎士の数が……少なかった?」
「そうだ」
レフが正解だというように頷く。
「逃げる時に結構騎士がいると思っていたんだが、それでも精々数十人くらいだ。国同士の戦争じゃあまずありえない。」
「でも、それなら他のところにいたっていう可能性があるんじゃ……」
「そうだったとしたら村に入る前に分かるさ。暗い中じゃあ敵さんが来るのが分からないからかがり火を沢山する。そうなると夜中だとしても結構な明るさになるはずだ」
痛む部分を擦りながらティムも話に加わってきた。
「いてて……。まぁ、確かにそうですよねぇ。見つからないようにするのだって夜中だから出来たわけですしぃ」
「だからってそれが何だと言われたらそれまでなんだけどな」
レフはそうしてまた酒を豪快に飲む。
違和感の正体がはっきりした事でスッキリしたのか、先程のような自棄酒ではなく酒を味わう為に飲んでいることで機嫌が伺える。
「もしかしたら、騎士の数が足りないからルメリオ亭で兵を集ったのかもしれん。あまり統率は良くないが、即戦力としては使えるだろうからな」
確かに、周りを見るからに戦いの場を経験しているような者達がいるのが分かる。
既に戦争を意識しているのか、武装している者までいた。
話す内容までもが今まで戦ってきた自らの武勇伝で、自慢げにそれを喧伝している。
またある者は、この戦争で自分たちの名を知らしめようと親しい仲間に話している。
「戦争なんて、嫌な事ばかりなのに……」
どうにも理解できない千歳がそう呟く。
戦争を経験した事がない、或いはするはずが無い現代の日本で育ってきた千歳にとって、戦争は常に悲惨な事しか生まないと思っているからだ。
それはテレビで、新聞で、インターネットで……。
だが、それをレフは仕方ないのさ言ってと溜息をついた。
「確かにそうだが、戦争のお陰で食っていける奴がいるし、出世する奴もいる。戦争はいわば生きていく為のモノでもあるし、チャンスでもあるのさ。他にも、理由は色々とあるかもしれんがな」
「…………」
それが今ここにいる人達なんだと千歳は何ともいえない表情で、まるで宴会とばかりに飲み食いしている者達を見回す。
戦争は何時死ぬか分からない。だからこそこうしてはしゃいでいるのかと思うと何とも切ない気持ちになる。
「さて、酒も飲んで満足したことだし、そろそろ戻るか」
と、レフが半分以下になった酒を飲み干して立ち上がる。
遅い時間でもあり、疲れが限界にきたという事で部屋に戻るらしい。
酒は違和感が何かと考える為と、疲れによる眠気を誤魔化そうとして飲んでいただけのようだ。
ティムも、やっとこれで眠れると思ったのだろう。嬉々として早く行きましょうと急き立てる。
わかったわかったと適当にあしらうレフ。そして千歳に言った。
「嬢ちゃん、俺たちはこれで部屋に戻る。流石にもう限界だ。それとな、明日にはここを出る」
「え?」
「明日ですかぁ!?」
千歳と、今知らされた連れである筈のティムが驚きの声をあげる。
「ああ、明日だ。顔を隠して逃げてきたは良いが、万が一という事もあるからな。早々にここを出ていった方が安全というわけだ」
「そ、それはそうですけどぉ。俺は別に騎士様に追いかけられるような事なんてしてないですし大丈夫ですから頭目だけ行けば……」
瞬間、レフに睨まれる。
「そんなの却下だ」
「そんなぁ」
項垂れるティム。だが、早く出て行くことに越した事はないのだろう。
もしかしたら明日のんびりしたせいで捕まるという事があるかも分からないのだから。
千歳は頷き、それから頭を下げた。
「分かりました。あと、本当にありがとうございました」
「なに、気にするな」
快活に笑いながらレフは頭をポンと叩いた。
「じゃあ、お嬢さんも明日にはここを離れるんですねぇ」
ティムは頭を掻きながら相変わらずのんびりした口調で言う。
だが、千歳はそれに首を振った。
「私は一日置いて行こうかと思います」
「ありゃ?そりゃまたなんでですかぁ?」
てっきり肯定するかと思っていたティムは首をかしげる。
千歳はこれに答えた。
「ちょっとお世話になった人に挨拶してからと思いまして……」
「お世話になった人ぉ?」
「はい。その人、色んな情報を教えてくれたんです。だから次に何処に行くのがいいのか相談も兼ねてお世話になった御礼に」
千歳の頭の中にロンダーの色んな情報を教えてくれたディーや、生意気そうな少年のジルのことが思い浮かんだ。
「そうか。まぁ、あまり長居はしないようにな」
レフは頷く。だがその視線が少し心配そうに見えて千歳は笑った。
「はい。明後日には出ますから大丈夫です」
心配してくれているのが嬉しかった。だからこそ安心させるように笑って答える。
「またいつか縁があったら会いましょう」
「ああ、そうだな」
「そうですねぇ」
もしかしたらもう会う事は無いかもしれないが、また会いたいという気持ちは本心だ。
それはレフたちも同じで、笑って頷くと同じようにまたいつかと言葉を紡いだ。
そしてレフとティム、千歳は店を出た。
翌日に二人はロンダーを去る。
短い間だったが、ベルツェ村の人達のように優しかった彼ら。
千歳は心の中で再度感謝を告げる。
そして、男二人と一人の少女はそれぞれの宿へと帰っていった。